皆さんこんにちは。
東京都調布市を中心に、全国各地にて一般左官・特殊左官を軸に建築工事一式を幅広く行っている株式会社ワイズファクトリーです。
皆さんは姫路城をご存じですか?
姫路城は兵庫県姫路市に位置する日本を代表する城郭建築で、その真っ白な外観から「白鷺城」の愛称で親しまれています。1993年に日本初の世界文化遺産に登録され、この城の最大の特徴は「白漆喰総塗籠造」という様式で、天守から塀、櫓に至るまで全体が白い漆喰で覆われています。
日本でもここまで漆喰を徹底的に用いた城はまれであり、その独特の美しさが世界的にも高く評価されました。漆喰は単に見た目の美しさだけでなく、防火や耐久性など実用面でも重要な役割を果たしています。
しかし、この美しさを支えてきたのは左官職人たちの手仕事だという事はごぞんじでしょうか。400年以上にわたり幾度となく塗り直され、今日の姿を保っているのです。漆喰という素材と、それを扱う左官という職業の魅力に迫ります。
姫路城に漆喰が使われた理由は?
姫路城の漆喰壁は美しさだけでなく、実は極めて実用的な理由から採用されました。
防火性能の高さ
最も重要なのは防火性能です。
日本の城は木造が基本のため火災に弱く、多くの名城が炎上して消失しました。しかし姫路城は石灰を主成分とする漆喰で外壁を厚く覆うことで、下地の木材や土壁を火から守る防壁としたのです。
当時の戦国時代から江戸初期にかけては、鉄砲や火矢による攻撃も一般的になっていました。漆喰は火の粉が付着しても燃え広がりにくく、銃弾や矢から壁を保護する強度も備えていたのです。
耐久性の高さ
さらに漆喰には優れた耐久性があります。
経年硬化によって石のように固まり、雨風に強く、数百年という長期にわたって形状を保持できました。日本の高温多湿な気候風土のなかで、城を長持ちさせるための合理的な選択だったわけです。
湿度調節に優れている
加えて漆喰は多孔質構造を持ち、適度な調湿性能も備えています。
湿気の多い季節には余分な水分を吸収し、乾燥している時期には放出するという働きが、城内の居住環境を快適に保ちました。さらに石灰の強アルカリ性は微生物の繁殖を抑える効果があり、カビや害虫から城を守る役割も果たしていたのです。
こうした実用性と美観を両立させた漆喰の使用は、日本の伝統建築の知恵の結晶と言えるでしょう。見た目の美しさは政治的威厳を示す効果もあり、遠くからでも白く輝く天守は「西国の将軍」の権威の象徴として人々に強い印象を与えました。美しさと機能性を兼ね備えた漆喰が、姫路城を400年以上も守り続けているのです。
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姫路城の漆喰を支える左官職人の技
姫路城の白漆喰の壁面は、高度な技術を持つ左官職人たちの手によって作り上げられています。一見なめらかな白壁ですが、その裏には緻密な施工の流れが隠されているのです。
まず木組みの下地に竹などの小舞(こまい)を編み、その上に荒壁土を塗り、乾燥させます。次に中塗り土、下塗り漆喰と層を重ね、最後に仕上げ用の白漆喰を鏝(こて)で丁寧に塗り上げます。
「白漆喰総塗籠造」と呼ばれる姫路城の特徴は、壁だけでなく軒裏や柱、さらには屋根瓦の目地に至るまで漆喰が施されている点です。特に高所での作業や複雑な形状への塗り付けには並外れた技術が必要でした。城全体を白く仕上げるには数万人・数十万人工もの労力が費やされたとも言われています。
漆喰の材料も職人の腕の見せどころでした。石灰を主成分に、海藻から作る糊や苆(すさ)と呼ばれる繊維、貝灰などを混ぜ合わせます。その配合は気温や湿度、施工箇所によって微妙に調整され、職人の経験と勘に委ねられていました。練り上がった漆喰は時間経過とともに硬化するため、限られた時間内で塗り終える段取りの良さも求められたのです。
江戸時代には姫路藩お抱えの御用職人が城壁の維持管理を担当し、その技術は明治以降も地元の左官業者に受け継がれました。漆喰塗りは単なる壁塗りではなく、日本の文化財を守り継承する重要な仕事なのです。
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昭和・平成の大修理に見る伝統技術の継承
姫路城は戦後から現代にかけて、大規模な修理を二度経験しています。
昭和の大修理(1956~1964年)では、大天守は全解体され、伝統技術と近代技術を組み合わせた修復が行われました。意匠面では伝統工法を尊重しつつも、基礎には鉄筋コンクリートを新設するなど、構造補強には近代工法も積極的に採用されたのです。屋根瓦の全面葺き替えと漆喰壁の大規模な塗り直しも実施され、外観は当時の姿を再現する方針がとられました。この修理によって姫路城は創建時に近い美観を取り戻し、「白鷺城の復活」として話題になりました。
平成の大修理(2009~2015年)では、世界遺産登録後の経年劣化に対応するため、総工費28億円をかけて瓦の交換や漆喰の塗り替えが実施されました。「素屋根」と呼ばれる巨大な仮設屋根で天守を覆い、職人たちは天候に左右されず作業できる環境で漆喰を塗り直していきました。
この修理で最も難しかったのは、伝統的な漆喰の材料確保でした。世界遺産としての真正性を保つため、可能な限り建造当時と同じ材料・工法が求められましたが、海藻や貝灰など伝統素材の生産者は激減していました。例えば漆喰の糊に使う北海道産の海藻「クロギンナンソウ」は入手不可能となり、他産地の海藻で代用せざるを得なくなりました。
また、新旧の漆喰をなじませる技術も試されました。既存部分と新しい漆喰の境目を目立たなくするよう、職人たちは境界を斫り調整し、質感が統一されるよう配合も微調整しました。こうした努力の結果、平成の修理完了時には姫路城は「白すぎ城」と言われるほど輝く白さを取り戻したのです。
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今直面する伝統継承の危機と挑戦
しかし左官という伝統技術は、その技と心を継承する上で大きな危機に直面しています。姫路城のような文化財を維持するには、材料の知識から塗りの技術まで幅広い技能が必要ですが、そうした「練りから塗りまで」一貫してできる職人は激減しています。
特に伝統的な生石灰から漆喰を作る工程は現場で見る機会が少なくなり、若手職人がこの技術を学ぶ場がほとんどありません。材料の配合や練り方は長年の経験からくる「感覚」の部分が多く、実際に先輩職人から直接教わる徒弟制度的な学びが不可欠です。しかし左官職人の高齢化と後継者不足により、その技術伝承の鎖が途切れかけているのです。
熟練の左官職人が持つ「鏝使い」の妙技も継承が難しい領域です。平らな壁を均一に仕上げる基本技術はもちろん、湿度や温度に応じて漆喰の粘度を見極める感覚、広い面を継ぎ目なく仕上げるための段取り、屋根の複雑な曲面を美しく納める技術など、何十年もの経験で培われた勘所は一朝一夕には身につきません。
こうした状況を打開すべく、様々な技術継承の取り組みが進められています。姫路城の修理現場では、あえて多世代混合のチーム編成を組み、ベテランから若手への技術伝承を図っています。10代の若い職人も参加し、実践の場で学ぶ貴重な機会となりました。また伝統技法の記録化や、左官学校の設立など組織的な取り組みも始まっています。
「左官は魂でつくる」との言葉があるように、単に技術だけでなく、素材への敬意や仕上がりへのこだわりなど、職人としての心構えも含めた総合的な継承が今求められているのです。
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左官の技を現代に活かす - 未来へつなぐ伝統技術
漆喰と左官の技術は、姫路城という歴史遺産だけでなく、私たちの暮らす現代の空間にも新たな価値をもたらします。自然素材である漆喰は健康志向のトレンドにも合致し、その呼吸する壁がもたらす心地よさは、高性能な建材でも代替できない魅力があります。左官という仕事は、単なる壁塗りではなく、空間に命を吹き込む創造的な職人技なのです。
文化財の修復から現代建築まで、左官技術の活躍の場は広がっています。漆喰の調湿性や断熱性、防火性能といった機能的価値に加え、手作業ならではの味わい深い質感は、無機質になりがちな現代空間に温かみを与えます。伝統を守りながらも新しい表現に挑戦する—それが左官の可能性です。
腕一本で一生を支える確かな技術、手仕事ならではの達成感、そして形あるものを残す喜び。漆喰の白さに象徴される清々しさと、時を経ても価値が増す奥深さを持つ左官の世界は、これからも日本の建築文化を支え続けるでしょう。
未経験から左官職人になれるワイズファクトリーとは?
株式会社ワイズファクトリーは、全国で一般的な左官から特殊な左官まで幅広く対応し、未経験から多くの左官職人を育てている会社です。現在、左官職人として一緒に働いてくれる仲間を大募集しています。
研修は、一人前の左官職人を育てるために考え抜かれたものであり、技術を磨くために必要不可欠な内容を組み込んでおります。左官の仕事は、日々の努力や探求が欠かせないため、弊社では「躍進し続ける」をテーマに技術を磨き続けております。勤務時間の他に、昼食と午前・午後で計2時間の休憩があり、1日7時間労働です。基本的に土日休みであるのに加え、GWやお盆、年末年始の休みも気兼ねなく取れるので、家族との時間をしっかり確保できます。年3 回の賞与もあり、安心して働ける環境です。経験者の方は給与にしっかり反映しますので、これまでの経験をお伝えください。
左官の仕事に興味がある方・手に職をつけたい方は、ぜひ弊社へお気軽にご連絡ください。左官という伝統技術を継承しながらセンスを磨き、お客様の理想を一緒にかなえていきましょう。