皆さんこんにちは。東京都調布市を拠点として、全国で左官工事をメインに手がけている株式会社ワイズファクトリーです。
左官職人が持つ技術は、日本だけでなく世界から注目を集めており、芸術品と言われているものも少なくありません。一方で、「左官」という名前の由来や左官の仕事の歴史など、左官について詳しく知らない方もいるでしょう。
この記事では、左官の語源や歴史に加え、左官職人が手がけるアートについてご紹介します。
■「左官」という名前の由来には5つの説がある
「左官」という名前がついた由来には諸説あり、有力な説として以下の5つがあると言われています。どのような説なのか、ひとつずつ見ていきましょう。
①宮廷に入るための官位であった説
昔、宮廷に入るには官位が必要とされていましたが、壁塗り職人が中に入れないと、宮廷内の建物を作ったり直したりすることはできません。そこで、壁塗り職人に「左官」という官位を与えたとの説があります。
②奈良時代から平安時代にかけての階級だった説
奈良時代から平安時代にかけて、「木工寮」(もくりょう)という役所が存在していました。木工寮は、宮殿の建築に携わる組織であり、組織内の階級の中に属(そうかん)というものがあったのです。
属は壁塗り職人をさしており、「そうかん」が訛って「さかん」に変化したという説があります。現在では、この説が最も有力だと言われています。
③大工を右官・壁塗り職人を左官と呼んでいた説
日本には、「左上右下」という言葉があり、奈良時代には建物の壁塗りを施す左官の重要度が高かったと言われています。これにより、壁塗りをする人物が「左官」・骨組みを作る大工が「右官」と呼ばれていたとの説があります。
ただ、大工を「右官」と呼んでいたことを示す文献が見つかっておらず、俗説であると考えられているのです。
④「しゃかん」から「さかん」になった説
昔は、左官のことを「しゃかん」と呼んでおり、「しゃかん」が訛って「さかん」になったとの説があります。「左官」は当て字であり、正しくは「沙官」「沙翫」などと記されていました。
⑤天皇からもらった称号の説
645年に、許勢波多哀(こぜはたお)という人物が、御所の外郭に土塀を作りました。この仕事が評価され、天皇から「左官」の称号を賜ったという説もあります。
■左官の歴史をたどってみよう
左官の仕事は、日本の歴史とともにさまざまな進化を遂げ、現在に至っています。どのような歴史をたどってきたのか、かいつまんでご紹介します。
左官の仕事の起源は、縄文時代に建てられた竪穴式住居の壁に作業を施した土塀だと言われています。現代の伝統左官で使われている土壁や漆喰は、飛鳥時代に入ってから使われるようになりました。奈良時代には、仏教や技術とともに左官鏝が持ち込まれたと言われ、この時代に建てられた寺院の壁は、鏝を使って土壁や漆喰を施工しています。
安土桃山時代に入ると、土に色をつけた色土が用いられたり、藁や苆(すさ)などを混ぜて作った集落壁などが茶室で使われたりするようになりました。江戸時代には、左官が大工・鳶(火消し)と並んで華の三職と言われ、城壁全体を漆喰で塗ることで耐火性が飛躍的に上がりました。
明治時代には、セメントも材料として加わってきた他、洗い出し・研ぎ出しなどの左官工法が考えられたと推測されていますが、戦後間もない時期には資材が高額であったことから、左官屋はセメントに土などを混ぜて使っていました。高度成長期を迎えると、地方からの集団就職などで左官職人が都会に大勢集まり、昭和後期のバブル期において左官は人気の職業のひとつだったのです。
平成に入り、2008年のリーマンショックの影響で建築件数が激減し、人気の職業も変化が見られ、左官は人気職から姿を消しました。
しかし、現代では左官の高い技術が見直され、左官の仕事に注目が集まっています。建物を建てるうえで、左官は欠かせない職種であるのに加え、漆喰等、意匠的な左官が見直されたり内装の仕上げとして人気が高まったりしているのです。
■近年注目を集めている【日本の左官】の魅力とは
日本の左官は、機能性とデザイン性の高さから大きな注目を集めています。多くの人を魅了する左官の秘密について見てみましょう。
・塗り壁人気の秘密は“機能性”
塗り壁が人気を誇っている秘密として、優れた機能性が上げられます。特に、珪藻土等は高い調湿性により、室内の湿度が高いと湿気を吸収し、反対に低い時には湿気を放出するため、室内の湿度を快適な状態に保てます。
また、塗り壁に使われている素材は、石灰・炭・土・川砂などの自然素材であり、人体に有害な化学物質は使われていません。このため、化学物質に見られるようなシックハウス症候群は発生しないのです。
・豊富なデザイン
左官の仕上げ・・・均一に塗る方法だけでなく、鏝(こて)などを使いさまざまなデザインを施すことが可能です。ここでは、取り入れられることが多いデザインを6つご紹介します。
扇仕上げ・・・扇状に模様を作る仕上げ方法です。等間隔に扇状を描くのは技術が必要であり、扇のパターンは鏝の形状で変わってきます。
鏝波仕上げ・・・鏝の跡をあえて残すパターンであり、最も一般的な仕上げ方法です。さまざまな表現ができ、職人の個性を出すことができます。
スパニッシュ仕上げ・・・凹凸がある長方形の塗り跡ができ、立体感のあるデザインが特徴的です。鏝の後ろ部分で角度をつけながら仕上げていきます。
刷毛(ハケ)引き仕上げ・・・ブラシのような刷毛を使って塗り跡をつける仕上げ方法です。コンクリートなどで多く使われるパターンです。
鏝刷毛引き仕上げ・・・鏝刷毛という左官道具を使って塗り跡を残す仕上げ方法です。縞模様で仕上げることができます。
スタッコ調仕上げ・・・洋風なデザインが特徴で、ザラザラとした質感に仕上がります。
施工場所に合わせて、デザインを選ぶことが重要です。
・塗り壁にすると効果的な場所とは
塗り壁にすると効果的な場所として、トイレ・リビング・パントリー・シューズクロークなどがあります。いずれも独特のニオイを持つ場所であるため、塗り壁が持つ消臭効果が期待でき、中でもゼオライト入り材料が特に消臭効果が期待できます。
特に、トイレやリビングは人気があり、芳香剤を使わなくともきれいな空気を保てるという声も多く聞かれます。
■職人技で作られた左官アートがすごい!
(参考:施工事例 東京都 某店舗 内装装飾仕上工事
https://www.ys-sakan.jp/gallery/store/27779
雰囲気に合うように、「鎧」と「波」のパターンを組み合わせたデザインに致しました)
近年、左官職人の高い技術力による施工が「左官アート」として認められ、高い評価を受けています。左官アートとはどのようなものなのでしょうか。
・左官アートとは
左官アートとは、鏝を使って塗り壁に造形や装飾を描く技術であり、左官職人が長年にわたって培った技術をもとに生み出される芸術作品と言えます。繊細さや美しさは世界でも類を見ず、お城や茶室・蔵など日本建築物の随所で見られるものです。
例えば、別名白鷺城とも呼ばれる姫路城に漆喰が施されていたり、NHK連続ドラマの題字を左官技能士が手がけたりと、左官アートの存在は広く知れ渡るようになりました。今後も、左官アートの魅力は多くの人々を惹きつけることでしょう。
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